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2026年10月06日

企業型DCの継続投資教育の進め方|事業主の努力義務と外部委託の使い方

企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入したものの、導入時の説明会以降は加入者への情報提供が手薄になっている、という中小企業は少なくありません。企業型DCでは、加入者が自分で運用商品を選んで運用の指図を行うため、加入後も資産運用について理解を深めてもらう「継続投資教育」が重要になります。この記事では、確定拠出年金法と厚生労働省・企業年金連合会の公表資料をもとに、事業主の位置づけ、加入時・加入後・退職時に伝える内容、外部委託の考え方を整理します。

企業型DCの投資教育は、事業主にどう位置づけられているか
条文上は「継続的に措置を講ずるよう努めなければならない」
確定拠出年金法第22条第1項は、企業型年金を実施する事業主に対し、加入者等が行う運用の指図に資するため、資産の運用に関する基礎的な資料の提供その他の必要な措置を継続的に講ずるよう努めなければならないと定めています。第2項では、その際に加入者等の資産運用に関する知識を向上させ、運用の指図に有効に活用できるよう配慮することも求めています(e-Gov法令検索で確認できる現行の条文です)。
条文の文言は「努めなければならない」ですので、いわゆる努力義務の形式です。ただし、厚生労働省は「確定拠出年金の投資教育」のページで、事業主等に対していわゆる「投資教育」を行う義務が定められていること、加入時はもちろん加入後も継続的に、必要かつ適切な投資教育を提供する必要があることを案内しています。努力義務だからといって、導入時に一度説明すれば足りるという位置づけではない点に注意が必要です。

なぜ加入後の教育が必要なのか
確定拠出年金は、拠出した掛金を加入者が投資信託、預金、保険等の運用商品から選んで運用し、その運用結果に基づく資産を年金として老後に受け取る制度です(厚生労働省の説明)。老後までの運用結果が将来の給付額に影響するため、加入者一人ひとりが適切に運用するための情報や知識を持っていることが重要とされています。
従業員が自分で運用の指図を行う以上、制度を導入した会社には、その判断を支える情報を継続して届ける役割が期待されます。なお、頻度や回数について具体的な数値基準は、本記事で確認した公表資料には記載がありませんでした。自社の加入者の状況に合わせて計画を立てることになります。

加入時・加入後・退職時に伝える内容
厚生労働省は、投資教育を「加入時」「加入後」「退職時」の3つの場面に分けて整理しています。

加入時:基礎的な事項を中心に
加入直後でも、加入者が自分のニーズに合った運用の指図ができるよう、次の3点を主な目的として基礎的な事項を中心に教育すると効果的とされています。
・確定拠出年金制度における運用の指図の意味を理解すること
・具体的な資産の配分を自ら行えること
・運用による収益状況の把握を自分で行えること
なお、運用の指図とは、運用商品を選び、どのように資産を配分するのかを運営管理機関に提示することを指します。

加入後:継続投資教育のねらい
加入後の継続的な投資教育は、加入時に得た基礎的な知識のスキルアップや、未習得事項のフォローアップとして効果的とされています。厚生労働省のページには、次の趣旨が書かれています。
・公的年金等と相まって老後の生活を支えるものになることを意識しつつ、自己の責任で運用の指図が行えるよう、定期的かつ継続的に情報提供の場を設けることが必要
・加入後は運用指図を経験しているため、各運用商品の運用の実績データ等を活用すると、より実践的で効果的な知識の習得が期待できる

退職時:資産の移換について説明する
確定拠出年金は、原則60歳まで積み立てた資産を引き出すことができません。60歳までに退職等で加入者の資格を失った場合、退職後6か月以内に他の確定拠出年金(企業型DC、iDeCoなど)や確定給付企業年金、通算企業年金へ資産を移換する必要があると、厚生労働省のページに説明があります(企業型DCや確定給付企業年金への移換は、転職先がその制度を実施している場合に限られます)。
事業主等は、加入者が資格を喪失したとき、または企業型年金が終了したときに、その加入者であった人に対して個人別管理資産の移換に関する事項を説明し、必要な手続きを行うよう周知する必要があるとされています。退職手続きのチェックリストに、この説明を組み込んでおくと漏れを防げます。

具体的な教育内容の4分類
具体的な投資教育の内容は、大きく次の4つに分けられると厚生労働省は示しています。
・確定拠出年金制度等の具体的な内容
・運用商品の仕組みと特徴
・資産運用の基礎知識
・確定拠出年金制度を含めた老後の生活設計
事業主等は、加入者等の知識水準や学習意欲等を勘案し、内容、時間、提供方法等について十分考慮したうえで、計画的に投資教育を行うよう求められています。提供方法の例として、資料やビデオの配布(電磁的な方法による提供を含む)、説明会の開催などが挙げられており、加入者にとって最適と思われる方法を選ぶとされています。

実施が難しいときは外部委託ができる
加入者等への投資教育は事業主等が行うこととなっていますが、人的・財政的な理由などで実施が難しい場合は、運営管理機関や企業年金連合会等に委託できると、厚生労働省のページに明記されています。
委託先の例
厚生労働省のページでは、委託先として次の3種類が例示されています。
・運営管理機関(ただし、すべての運営管理機関が投資教育の委託を受けているわけではないため、各運営管理機関への確認が必要)
・企業年金連合会(継続投資教育事業)
・その他の投資教育を受託している会社
外部に委託する場合でも、説明会の実施にあたっては、加入者への資料の配布、就業時間への配慮、会場の準備などに事業主が協力することが求められています。委託すれば会社の関与が不要になるわけではない点を押さえておきましょう。

企業年金連合会の継続投資教育サービス
企業年金連合会は、企業型DCを実施する事業主から委託を受け、厚生労働大臣の認可のもと、企業型DC加入者に対して継続投資教育を実施しています(平成29年度から実施)。2026年10月時点の同連合会の公式ページでは、次のとおり案内されています。
・ウェビナー(オンラインのセミナー):無料
・eラーニング(動画コンテンツの視聴):無料(2026年4月から)
・講師派遣(対面・Webで講演):一般料金は1回40,000円、会員料金は1回32,000円(いずれも税込。交通費等は別途負担)
利用するには申込フォームから申し込み、業務委託規約への同意が必要です。申込後に連合会から委託申込承諾書が送付され、承認手続には1週間程度かかるとされています。事業所や団体が連合会の会員かどうかは問われません。料金や提供内容は変更される場合があるため、申込前に必ず公式ページで最新の内容をご確認ください。

中小企業が無理なく続けるための進め方の一例
ここからは、上記の公表資料を踏まえた、実務上の進め方の一例です(法令や通知で定められた手順ではありません)。
1. 現状を棚卸しする
まず、過去の説明会や配布資料の実施状況、加入者からの問い合わせの内容を整理します。どの層にどの情報が届いていないかを把握することが出発点になります。
2. 対象者ごとに目的を分ける
新しく加入した人、運用の指図を何度か経験した人、退職や定年が近い人では、知りたいことが異なります。厚生労働省の整理に沿って、加入時は基礎、加入後はフォローアップ、退職時は移換の説明、と目的を分けると計画を立てやすくなります。
3. 年間の計画に落とし込む
実施の時期、方法(ウェビナー、eラーニング、社内説明会、資料配布)、担当者を決めて、年間の計画に載せます。就業時間内に参加できるようにするなど、参加しやすい環境づくりも重要です。
4. 説明の範囲に注意する
投資教育は、運用に関する情報や知識を提供するものです。特定の運用商品を勧めたり、将来の運用成果を約束したりするような説明は避け、商品の仕組みや特徴、リスクを中立に伝える姿勢が欠かせません。
5. 実施記録を残し、見直す
実施日、内容、参加者数、受講後の質問などを記録しておくと、翌年度の計画を見直す材料になります。

よくある質問
Q. 継続投資教育は、法律上の義務ですか。
A. 確定拠出年金法第22条第1項は、事業主に対し、運用の指図に資する資料の提供その他の必要な措置を継続的に講ずるよう「努めなければならない」と定めています。条文の形式は努力義務ですが、厚生労働省は加入時も加入後も必要かつ適切な投資教育を提供する必要があると案内しています。
Q. 年に何回実施すればよいですか。
A. 本記事で確認した厚生労働省・企業年金連合会の公表資料には、回数や頻度の具体的な基準は記載されていませんでした。厚生労働省は、加入者の知識水準や学習意欲等を勘案して、内容・時間・提供方法を考慮し、計画的に行うよう求めています。
Q. 自社で実施する人手がありません。外部に任せてもよいですか。
A. 人的・財政的な理由などで実施が困難な場合は、運営管理機関や企業年金連合会等に委託できます。ただし、すべての運営管理機関が委託を受けているわけではないため、契約している運営管理機関へ確認してください。委託した場合でも、資料の配布、就業時間への配慮、会場準備などの協力は事業主に求められています。
Q. 企業年金連合会のサービスを使うと費用はかかりますか。
A. 2026年10月時点の公式ページでは、ウェビナーは無料、eラーニングは2026年4月から無料とされています。講師派遣は有料で、一般料金は1回40,000円、会員料金は1回32,000円(税込、交通費等は別途)です。最新の条件は公式ページでご確認ください。
Q. 退職する従業員には何を説明すればよいですか。
A. 厚生労働省のページでは、加入者が資格を喪失したときなどに、個人別管理資産の移換に関する事項を説明し、必要な手続きを行うよう周知することが示されています。60歳までに退職した場合は、退職後6か月以内に他の制度へ資産を移換する必要があるとされています。
Q. 説明会で、おすすめの運用商品を紹介してもよいですか。
A. 投資教育は、加入者が自分で判断して運用の指図を行えるよう、制度や商品の仕組み、資産運用の基礎知識を伝えるものです。特定の商品を勧めたり、運用成果を約束したりする説明は避け、中立的な情報提供にとどめる運用が望ましいと考えられます。実際の説明内容は、運営管理機関や専門家と相談して決めてください。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

出典
・確定拠出年金の投資教育(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/kyouiku.html
・確定拠出年金法(e-Gov法令検索・デジタル庁)
https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000088
・継続投資教育(企業年金連合会)
https://www.pfa.or.jp/kanyu/keizoku/index.html

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