退職金制度と人事制度の統合設計

退職金は、従業員が長年働いたことへの報酬であり、企業にとっては将来の人件費です。そのため退職金制度は、等級制度・人事評価制度・賃金制度・定年制度と切り離して見直すことができません。当社は、退職金・企業年金制度を人事制度全体の一部として設計し直すことを提案しています。

退職金制度だけを見直すと起きること

退職金制度を単独で見直すと、ほかの人事制度との間に次のようなずれが生じることがあります。

  • 退職金が基本給に連動する計算式のまま賃上げを行うと、賃上げ分がそのまま退職金の増加につながり、将来の負担が想定以上にふくらみます。
  • 人事評価制度を成果重視に改めても、退職金が勤続年数だけで決まる計算式のままだと、評価の結果が退職時の処遇に反映されません。
  • 定年の延長や継続雇用期間の延長を行う際に、退職金の算定期間や支給時期を決め直さないと、制度の間に矛盾が生じます。
  • 退職金の準備方法(社内準備、中退共、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金など)によって、毎年の掛金負担や会計上の扱いが変わります。月例賃金・賞与と合わせた総額人件費で見ないと、負担の大きさを正しく判断できません。

人事制度の各要素と退職金の接点

退職金制度と人事制度を一体で設計するときの確認点
人事制度の要素 退職金との接点 統合設計のポイント
等級制度 等級ごとの役割の重さを退職金に反映できるか 等級と在籍年数に応じてポイントを積み上げる「ポイント制退職金」にすると、等級制度と退職金を直接結びつけられます。
人事評価制度 評価の結果が退職時の処遇まで届くか 評価の結果を等級の昇格・降格に反映し、等級を通じて退職金のポイントに反映させます。
賃金制度 基本給の改定が退職金に波及するか 退職金の算定基礎を基本給から切り離し、賃上げと退職金の負担を別々に管理できるようにします。
定年・継続雇用制度 支給時期と算定期間をどう定めるか 高年齢者雇用安定法で、65歳までの雇用確保は義務、70歳までの就業機会の確保は努力義務とされています。これを踏まえて、退職金の算定期間と支給時期を決めます。
福利厚生・社宅制度 報酬全体の中で退職金をどう位置づけるか 退職金・企業年金、社宅、各種手当を報酬全体として整理し、従業員にとっての価値と企業の負担を比べます。
総額人件費 掛金や引当の負担を人件費全体で管理できるか 月例賃金・賞与・社会保険料・退職給付費用を合わせて、将来の人件費を試算します。

中小企業の退職金制度の現状

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、従業員30〜99人の企業のうち退職給付制度があるのは70.1%で、そのうち77.2%が「退職一時金制度のみ」です。退職一時金の準備方法は「社内準備」が49.6%、「中小企業退職金共済制度(中退共)」が48.5%となっています。

退職一時金だけの制度では、将来の支払いに向けた資金の準備方法と、賃金制度との連動のさせ方が、そのまま会社の負担を左右します。統計の詳細は「公的統計で見る中小企業の退職給付制度」をご覧ください。

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」(2023年10月31日公表)第16表・第17表

統合設計の進め方

  1. 現状分析:就業規則・賃金規程・退職金規程と、従業員の年齢・勤続年数・等級の分布を確認します。
  2. 将来負担の試算:現行制度のままの場合の退職金の支払額と、総額人件費の推移を試算します。
  3. 制度の設計:等級制度・人事評価制度・賃金制度と整合する退職金の算定方式と、準備方法(社内準備、中退共、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金など)を設計します。
  4. 総合検証:新旧の制度で従業員ごとの退職金額を比べ、不利益変更にあたる部分がないか、経過措置が必要かを確認します。
  5. 従業員への説明と規程の整備:制度の趣旨を従業員に説明し、就業規則・退職金規程を改定して届け出ます。

ネクストプレナーズの人事制度コンサルティング

当社(株式会社ネクストプレナーズ)は、退職金・企業年金のほかにも、次の人事制度のコンサルティングを行っています。複数の制度をまとめて見直す場合も、一括してご相談いただけます。

よくあるご質問

Q. 退職金制度だけを見直してはいけませんか?

見直すこと自体は可能です。ただし、賃金制度や等級制度と連動している部分(算定の基礎となる給与、勤続年数の数え方、支給時期など)を確認しないまま変更すると、賃上げや評価制度の改定のたびに退職金の負担が想定外に変わることがあります。少なくとも賃金制度・定年制度との整合は、あわせて確認することをおすすめします。

Q. ポイント制退職金とは何ですか?

等級や役職、在籍年数などに応じて毎年ポイントを付与し、退職時の累計ポイントに単価を掛けて退職金額を決める方式です。基本給と切り離して算定できるため、賃金制度を改定しても退職金への影響を抑えられ、等級制度と退職金を結びつけやすくなります。

Q. 定年延長と退職金の見直しは同時に行うべきですか?

同時に検討することをおすすめします。定年を延長すると、退職金の算定期間や支給時期、定年前に退職した場合の扱いなどを決め直す必要があるためです。高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保が義務、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされています。

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