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2026年10月22日

企業型DCの退職手続き|資格喪失から移換まで、自動移換を防ぐ会社の案内

企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入者が退職すると、会社の掛金は止まり、積み立てられた個人別管理資産をどうするかを退職者本人が決めて手続きすることになります。企業型DCの退職手続きで押さえるべき要点は、資格喪失から6か月以内に、移換などの申出をしてもらうことです。申出がないまま期限を過ぎると、資産は国民年金基金連合会に自動移換され、運用されないまま管理手数料が引かれる状態になります。この記事では、企業型DCを導入している中小企業の人事担当者に向けて、退職者が出たときの流れ、会社が伝えるべき内容、自動移換を避けるための案内のポイントを、厚生労働省などの公表資料に基づいて整理します。

企業型DCの退職手続きとは何か
個人別管理資産とは、企業型DCで加入者一人ひとりに分けて管理されている資産(掛金と、その運用による損益の合計)のことです。資格喪失とは、退職などにより、企業型DCの加入者でなくなることをいいます。

企業型DCは、会社の退職金制度の一部として運用されていても、資産は加入者ごとに管理されます。そのため、退職したときの扱いも、会社が払う退職金とは異なります。関東信越厚生局が実施事業主に宛てた通知では、確定拠出年金法と施行規則の規定により、退職した方が自ら個人別管理資産の移換手続きを行うことになっていると説明されています。厚生労働省の「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」のページでも、企業型DCからの移換は、個人の申出によって行う形で整理されています。

つまり、会社が移換先を決めたり、本人に代わって手続きを済ませたりする仕組みではありません。会社の役割は、退職する本人が期限内に必要な手続きを取れるよう、正確な情報を伝えることです。
退職後に会社の掛金が止まる点も説明する
資格喪失後は、企業型DCの加入者として掛金を積み立てることができなくなります。退職者によっては、「会社を辞めても自動的にそのまま運用が続く」と考えている場合があります。資産の持ち運びに本人の手続きが必要なことを、最初に伝えておくことが大切です。

退職者が選べる移換先は何か
退職者が選べる移換先は、転職先の状況や本人の就業形態によって異なります。厚生労働省と、国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトの案内を整理すると、主な選択肢は次のとおりです。

・iDeCo(個人型確定拠出年金):転職先に企業型DCがない場合や、自営業・無職になる場合などに、個人型で資産を引き継ぐ選択肢です
・他の企業型DC:転職先が企業型DCを導入している場合に、そちらへ移す選択肢です
・確定給付企業年金(DB):転職先がDBを導入していて、移換を受け入れる条件を満たす場合に選べます
・通算企業年金(企業年金連合会):企業年金連合会に移して管理してもらう選択肢です
・脱退一時金の請求:法令で定める要件を満たす場合に限られます

厚生労働省の2018年5月施行の改正の概要では、企業型DCからDBや退職金共済へ移す場合、移換先の制度設計によっては、確定拠出年金に加入していた期間の扱いが調整される可能性があるとされています。転職先の制度によって可否や扱いが変わるため、退職者には「転職先の人事担当者にも確認してください」と案内しておくと安心です。

脱退一時金は、確定拠出年金が原則として60歳になるまで引き出せない制度であることから、請求できるケースが限られています。請求できるかどうかは、運営管理機関や国民年金基金連合会の案内で確認するよう伝えてください。

退職後いつまでに手続きが必要か(6か月の期限)
結論として、退職者は資格喪失日の属する月の翌月から起算して6か月以内に、移換の申出(または脱退一時金の請求)を行う必要があります。厚生労働省の2018年5月施行の改正の概要には、事業主が資格喪失者に説明すべき内容として、この移換申出期限が「資格喪失日の属する月の翌月から起算して6月以内」であることが挙げられています。

たとえば、資格喪失日が4月中の場合、翌月の5月から数えて6か月後の10月末が、一つの目安になります。実際の期限日は退職の日付や運営管理機関の案内によって確認してください。
期限を過ぎるとどうなるか(自動移換)
自動移換とは、期限内に移換の申出や脱退一時金の請求がない場合に、個人別管理資産が国民年金基金連合会へ自動的に移される仕組みのことです。関東信越厚生局の通知では、法第83条第1項第1号の規定により、退職後6か月以内に手続きが行われなかった場合には自動移換されると説明されています。

自動移換されると、本人には次のような不利益が生じます。

・資産が運用されない状態になる(iDeCo公式サイト)
・管理手数料が継続して引かれる(iDeCo公式サイト)
・自動移換されている期間は、老齢給付金を受け取るための通算加入者等期間に算入されない(iDeCo公式サイト)
・掛金の納付や運用の指図ができない(関東信越厚生局の通知)

通算加入者等期間に入らないことの影響は、将来の受給開始年齢に表れます。厚生労働省の確定拠出年金制度の概要によると、老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が段階的に引き上げられます。8年以上10年未満は61歳、6年以上8年未満は62歳、4年以上6年未満は63歳、2年以上4年未満は64歳、1か月以上2年未満は65歳からです。
他の制度に加入している場合の自動的な移換
2018年5月1日施行の改正により、資格喪失後に他の企業型DCの加入者資格を取得している場合は、その企業型DCへ、iDeCoの加入者または運用指図者の資格を取得している場合は、そのiDeCoへ、個人別管理資産が自動的に移換される仕組みが整えられました。上記のいずれにも当てはまらない場合に、国民年金基金連合会へ移されます。

会社が行う退職時の案内の手順
関東信越厚生局は、自動移換の件数が増える傾向にあること、特に3月末に資格喪失した人の自動移換が多く発生していることを指摘したうえで、退職する際に事業主から移換手続きが十分に周知されていないケースも少なくないとして、実施事業主に周知を依頼しています。人事担当者は、次のような流れで案内を組み立てると、伝え漏れを防ぎやすくなります。

ステップ1:退職が決まったら加入状況を確認する
退職日が決まった時点で、その従業員が企業型DCの加入者であることを確認します。運営管理機関に届け出る資格喪失の事務の具体的な様式や提出方法は、加入している企業型DCの規約や運営管理機関の案内に従ってください。
ステップ2:期限と移換先を説明する
事業主には、資格喪失者に対して、移換申出の期限、DBへの移換が可能な場合とその期間、国民年金基金連合会へ移換された場合に老齢給付の支給時期に影響が出ることを説明する義務があります。口頭だけで済ませず、書面やメールでも同じ内容を渡すのが望ましいと考えます。
ステップ3:手続きの窓口を案内する
移換先ごとの手続きの詳細は、国民年金基金連合会のiDeCo公式サイト(「退職者・転職者の方へ」)に掲載されています。関東信越厚生局の通知でも、このページが案内先として示されています。運営管理機関の問い合わせ窓口もあわせて伝えてください。
ステップ4:案内した記録を残し、連絡先を確認する
いつ、誰に、何を案内したかを記録しておくと、後日の問い合わせにも対応しやすくなります。退職後に連絡が取りづらくなる場合に備えて、本人の同意を得たうえで退職後の連絡先を確認しておくことも、実務上の工夫の一つです。

共同で企業型DCを実施している場合、関東信越厚生局の通知は、代表事業主に対して、共同実施している他の事業主にも周知するよう求めています。グループ会社などで制度を共有している場合は、案内の様式を統一しておくと運用が楽になります。

ネクストプレナーズの見解
企業型DCの退職手続きは、会社が代行できる事務ではなく、案内の質で結果が分かれる事務だと考えます。特に、3月末など退職が集中する時期は、案内の漏れから自動移換につながりやすいため、退職の面談や最終出社日の書類渡しの場面に、移換の案内を組み込んでおくことをおすすめします。また、中小企業では担当者が一人で複数の制度を扱うことが多いため、案内文のひな形を運営管理機関の資料と照らし合わせて整えておくと、担当者が替わっても対応を保ちやすくなります。

よくある質問
Q. 退職者への移換手続きの説明は、会社の義務ですか。
A. はい、2018年5月1日施行の改正で、事業主は資格喪失者に対し、移換申出の期限などを説明する義務があるとされています。厚生労働省の改正概要で確認できます。
Q. 会社が退職者に代わって移換手続きをしてもよいですか。
A. 手続きは退職者本人が行う仕組みです。関東信越厚生局の通知でも、退職した方が自ら移換手続きを行うことになっていると説明されています。会社の役割は、期限や選択肢を伝え、手続きの窓口を案内することです。
Q. 6か月を過ぎてしまったらどうなりますか。
A. 国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換中は資産が運用されず、管理手数料が引かれ、通算加入者等期間にも算入されません。その後の手続きについては、国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトで確認するよう、本人に案内してください。
Q. 転職先に企業型DCがない場合、どこへ移せますか。
A. 主な選択肢はiDeCo(個人型確定拠出年金)です。そのほか、転職先がDBを導入している場合のDB、企業年金連合会の通算企業年金も選択肢に挙げられています。どれが適しているかは、本人の就業形態や転職先の制度によって異なります。
Q. 退職者が3月末に集中する会社では、何に気をつければよいですか。
A. 案内の時期を早めることです。関東信越厚生局は、特に3月末の資格喪失者の自動移換が多く発生していると指摘しています。退職日が決まった時点で、期限と選択肢を書面で渡すようにしておくと、伝え漏れを防げます。
Q. 複数の会社で共同実施している場合、周知はどうすればよいですか。
A. 関東信越厚生局の通知では、代表事業主が、共同で実施している他の事業主にも周知するよう求められています。案内の様式を共通化しておくと運用しやすくなります。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。また、期限の起算日や必要書類は、加入している企業型DCの規約や運営管理機関の案内によって異なる場合があります。

監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
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出典
・年金資産の持ち運び(ポータビリティ)(厚生労働省)
・確定拠出年金制度等の一部を改正する法律の主な概要(2018年5月1日施行)(厚生労働省)
・確定拠出年金制度の概要(厚生労働省)
・確定拠出年金の資格喪失者への移換手続の周知についてのお願い(関東信越厚生局企業年金課)
・iDeCo加入者で転職・退職された方へ(退職者・転職者の方へ)(国民年金基金連合会)

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