中退共の退職手続き|事業主が行う退職届の提出から退職金の支払いまでの流れ
中退共(中小企業退職金共済)に加入している会社で従業員が退職したときは、事業主が「被共済者退職届」を中退共本部に送り、退職金共済手帳を退職者に渡す、という手続きが必要です。中退共の退職手続きで事業主が押さえるべき点は、退職届を遅れずに送ること、手帳を3枚そろえて退職者に渡すこと、退職金の請求は退職者本人でなければできないことの3つです。この記事では、中退共に加入して初めて退職者が出た中小企業の人事・総務担当者に向けて、事業主が行う手続き、退職者が行う請求、支払いまでの期間、役員就任や同居の親族などの特別なケースを、中退共の公式ページに基づいて整理します。
中退共の退職手続きの全体像
被共済者退職届とは、従業員の退職を事業主が中退共本部に知らせるための書類のことです。中退共に加入している従業員(被共済者)一人ひとりに渡されている「退職金共済手帳」の2枚目に綴じられています。3枚目は「退職金(解約手当金)請求書」で、退職者が退職金を請求するときに使います。
中退共の退職金は、会社を経由せず、中退共から請求書に記入された請求人の預金口座へ直接振り込まれます。そのため、退職時の手続きは事業主と退職者に分かれ、次の順番で進みます。
・事業主:被共済者退職届に記入し、中退共本部保全課へ送る
・事業主:請求書の事業主記入欄に記入し、退職金共済手帳(3枚)を退職者に渡す
・退職者:請求書に記入し、添付書類をそろえて中退共本部給付業務部へ送る
・中退共:支払いの準備ができたら通知を送り、退職者の口座へ退職金を振り込む
事業主が行う手続きの3ステップ
事業主の手続きは、中退共の公式ページで3つの段階に整理されています。
ステップ1:「被共済者退職届」を記入する
退職金共済手帳の2枚目に必要事項を記入します。記入する項目は、退職年月日、退職事由、従業員の住所、電話番号、マイナンバー、事業主の住所・電話番号・氏名(または名称)です。マイナンバーの記入欄があるのは、2016年(平成28年)10月5日以降に発行された退職届です。
ステップ2:「被共済者退職届」を中退共本部保全課へ送る
従業員の退職日が決まり次第、郵便追跡サービスが利用できる書留郵便または特定記録郵便等で、すみやかに中退共本部保全課へ送ります。「被共済者退職届」はハガキではないため、ハガキとして送らないよう注意が必要です。電子申請の場合は、中退共のページにある退職届申請フォームから手続きします。電子申請用の退職届はe-Govに掲載されており、紙の退職届の撮影画像やスキャンしたものは使えません。
掛金は、退職した日の属する月分まで納付します。退職届の提出が遅れると、退職月の翌月以降の掛金が引き落とされる場合がありますが、その分は後日、掛金の振替口座に返されます。退職日がすでに決まっていて変更の可能性がない場合は、退職日の1〜2か月前から退職届を送ることもできます。
ステップ3:「退職金共済手帳」を退職者に渡す
3枚目の「退職金(解約手当金)請求書」の右上にある事業主(共済契約者)記入欄に記入し、退職届を切り離したあとの手帳を、3枚とも退職者に渡します。死亡による退職の場合は、請求人となる遺族に渡します。あわせて、退職者に請求手続きを行うよう伝えます。中退共は、退職者向けの案内として「退職金請求の手続き(従業員用)」を用意しており、請求書に添えて渡すよう案内しています。
退職者が行う請求と、支払いまでの期間
退職金の請求は、退職した被共済者本人(死亡の場合は遺族)でなければできません。また、退職金を受ける権利は、譲渡したり、担保に供したり、差し押さえたりすることができないとされています。事業主が請求を代わりに進める形にはならないため、手帳を渡すときに、退職者自身が請求することを伝えておくことが大切です。
退職者が用意する書類
中退共の従業員向けページでは、必要書類が次のとおり示されています。
・退職金(解約手当金)請求書(退職金共済手帳の3枚目)
・住民票(マイナンバー入り):発行日から3か月以内で、コピーでないもの
・身元確認書類(いずれか1通):運転免許証、パスポート、健康保険資格確認書のコピー等
住所が事業所と同一または事業所の寮等である場合などは、追加の添付書類が必要になります。請求書には、金融機関の窓口で口座確認印を受けるか、普通預金通帳のコピー等を添付する必要があります。書類は書留郵便または特定記録郵便等で、中退共本部給付業務部へ送ります。
退職金が振り込まれるまでの期間
中退共は、請求を受け付けてから、1か月から、掛金の納付方法によっては2か月半程度で支払うとしています。退職金は、退職した月分までの掛金の入金を確認してから支払うため、事業所の掛金の納付状況によっては2か月以上かかることもあります。書類に不備や不足がある場合は、確認ができてからの支払いになります。
支払いの準備ができると、振込予定日の2週間ほど前に、退職者には「退職金等振込通知書」、事業主には「退職金等支払のお知らせ」が届きます。退職金額や振込予定日については、電話やメールでの回答はしていません。退職者から「いつ入金されるのか」と聞かれたときは、この通知を待つよう案内するのが現実的です。
事業主が迷いやすい特別なケース
従業員が役員になる場合
中退共では、法人企業の役員は原則として加入資格がありません。従業員が役員に就任する場合は、役員に就任した日(登記簿に記載されている就任日)の前日を退職日として、被共済者退職届を提出し、あわせて退職金の請求手続きを行います。退職事由は事業主都合の扱いになります。
ただし、支店長・工場長・部長など使用人としての職制上の地位があり、常時その職務に従事して賃金を受けているなど、実態として雇用関係があると認められる使用人兼務役員は、そのまま契約を継続できます。代表取締役、副社長・専務・常務に準ずる役員などは、使用人兼務役員にはなりません。
退職者が同居の親族である場合
退職者が同居の親族のときは、被共済者退職届のほかに、同居の親族に係る確認書(チェックシート)、労働条件確認書、賃金の支払いがあったことを確認できる書類(賃金台帳の写し等)の提出が必要です。退職時に同居の親族のみを雇用する事業所の場合は、これらに加えて、同居の親族の退職事由証明書も必要になります。
退職者が中退共に加入している別の会社へ転職する場合
中退共に加入している企業間を転職する場合は、通算申出を行うことで、前の会社の掛金納付月数を引き継げる場合があります。通算の条件は、旧事業所を退職した後3年以内に新事業所で被共済者になっていること、旧事業所で退職金を請求していないこと、旧事業所での掛金納付月数が12月以上あることです。掛金納付月数が12月未満の場合は、退職事由が自己都合や本人の責めに帰すべき事由によるものでないことについて、厚生労働大臣の認定書が必要になります。通算できる可能性があるときは、退職者にその旨を説明したうえで、手帳3枚を渡すよう案内されています。
会社からも別に退職金を支払う場合
中退共とは別に会社からも退職金を支払う場合は、手続きの前に、退職金を支払う順番(第一支払者と第二支払者)を決める必要があり、詳細は最寄りの税務署に確認するよう案内されています。会社が先に支払う場合は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取って源泉徴収の計算を行い、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を発行します。退職者は、その源泉徴収票のコピーなどを中退共に提出します。源泉徴収の考え方は、当サイトのコラム「退職金の源泉徴収の手順」でも整理しています。
従業員全員が退職した場合
加入している従業員全員が退職した場合でも、従業員それぞれの退職手続きのほかに、事業所としての契約解除の手続きは必要ありません。
退職手続きの確認リスト
初めて退職者が出る会社では、次の項目を退職日が決まった時点で確認しておくと、漏れを防げます。
・退職届に必要な情報(退職年月日、退職事由、住所、マイナンバー等)をそろえたか
・被共済者退職届を、書留郵便または特定記録郵便等で、退職日が決まり次第送ったか
・請求書の事業主記入欄に記入し、手帳3枚を退職者に渡したか
・退職者に「請求は本人が行うこと」と、必要書類(住民票・身元確認書類)を伝えたか
・同居の親族、役員就任、通算の可能性など、特別なケースに当てはまらないか確認したか
・会社からも退職金を支払う場合、支払う順番を決め、税務署に確認したか
ネクストプレナーズの見解
中退共の退職手続きは、事業主が退職届を出し、退職者が別に請求するという二段階の仕組みのため、手帳を渡し忘れると請求が進まない点に注意が必要だと考えます。退職日が決まったら、退職届の送付と手帳の交付を、退職時の社内手続きの一覧に組み込んでおくことをおすすめします。また、担当者が替わっても対応を保てるよう、中退共の公式ページへのリンクと、書類の送付先を社内の手順書にまとめておくと安心です。
よくある質問
Q. 中退共に加入している従業員が退職したら、会社は何をすればよいですか。
A. 被共済者退職届に記入して中退共本部保全課へ送り、請求書の事業主記入欄に記入したうえで、手帳3枚を退職者に渡します。退職金の請求は、退職者本人が行います。
Q. 被共済者退職届は、いつまでに送ればよいですか。
A. 退職日が決まり次第、すみやかに送ります。提出が遅れると、退職月の翌月以降の掛金が引き落とされる場合があります。引き落とされた分は、後日、掛金の振替口座に返されます。
Q. 退職金は、請求してからどのくらいで振り込まれますか。
A. 請求を受け付けてから、1か月から掛金の納付方法によっては2か月半程度とされています。退職月分までの掛金の入金を確認してからの支払いになるため、2か月以上かかることもあります。
Q. 退職金の請求を、会社が代わりに行えますか。
A. 中退共は、退職金の請求は退職した被共済者本人(死亡の場合は遺族)でなければできないとしています。事業主の役割は、手帳を渡して、請求手続きを行うよう伝えることです。
Q. 従業員が役員になるときは、退職手続きが必要ですか。
A. 使用人兼務役員の要件を満たさない場合は、就任日の前日を退職日として被共済者退職届を提出し、退職金を請求します。実態として雇用関係が続く使用人兼務役員は、契約を継続できます。
Q. 従業員全員が退職したら、契約の解除手続きは必要ですか。
A. 不要です。従業員それぞれの退職手続きのほかに、事業所としての契約解除の手続きは必要ありません。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。また、必要書類や様式は更新されることがあるため、手続きの前に中退共の公式ページで最新の内容をご確認ください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
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出典
・従業員が退職した際の手続の流れ(事業主)(中小企業退職金共済事業本部)
・従業員が退職した際の手続の流れ(従業員)(中小企業退職金共済事業本部)
・従業員が退職したときは事業主はどんな手続きをすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金請求から支払いまでの流れはどうなっていますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金は請求してから何日くらいで支給されますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・従業員が役員になった場合はどうすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
・中退共制度に加入している企業間を転職した場合に、通算ができますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・中退共とは別に会社等からも退職金を支払うのですが、どのような手続きをすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)




