中退共の掛金の決め方と国の助成制度|加入時・増額時に確認すべきこと
中退共(中小企業退職金共済制度)に加入する、あるいは掛金を見直すときに、多くの経営者・人事担当者が悩むのが「掛金月額をいくらにするか」と「国の助成をどう受けるか」です。この記事では、中退共の公式サイトで確認できる内容に基づいて、中退共の掛金の決め方と国の助成制度、加入時・増額時に確認すべきことを整理します。
中退共の掛金とは何か
中退共の掛金とは、事業主が中退共(独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部)に毎月納付する、従業員ごとの退職金の原資となるお金のことです。中退共は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた、中小企業のための国の退職金制度で、従業員が退職したときは、中退共から退職金が直接従業員に支払われます。
掛金について、最初に押さえておきたい基本は次の3点です。
・掛金は全額事業主が負担します。掛金の一部でも従業員に負担させることはできません。
・毎月の掛金は、事業主が指定した金融機関の預金口座から、当月または翌月の18日(金融機関が休業日の場合は翌営業日)に口座振替で納付します。
・従業員に支払われる退職金額は、加入期間中に納付された掛金月額と納付月数によって決まります。
掛金月額はいくらから選べるのか
掛金月額は、5,000円から30,000円までの16種類から、従業員ごとに任意に選べます。16種類は次のとおりです。
・5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円
・12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円
・22,000円、24,000円、26,000円、28,000円、30,000円
短時間労働者(パートタイマー等)は、上記に加えて特例として2,000円・3,000円・4,000円でも加入できます。短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同じ事業所に雇用される通常の従業員より短く、かつ30時間未満である従業員のことです。申込時には、短時間労働者であることの証明書として「労働条件通知書(雇入通知書)」または「労働契約書」の写しが必要です。
加入できる企業と従業員の条件
中退共に加入できる企業は、業種ごとに次のいずれかを満たす企業です(個人企業や公益法人等の場合は、常時雇用する従業員数によります)。
・一般業種(製造業、建設業等):常時雇用する従業員数300人以下、または資本金・出資金3億円以下
・卸売業:100人以下、または1億円以下
・サービス業:100人以下、または5千万円以下
・小売業:50人以下、または5千万円以下
新規加入の際に、常時雇用する従業員数が一般業種で250人、卸売業・サービス業で90人、小売業で40人以上の場合は、「中小企業者であることの証明」が必要です。
従業員は原則として全員を加入させます(包括加入の原則)。ただし、期間を定めて雇用される従業員、季節的業務に雇用される従業員、試用期間中の従業員、短時間労働者、休職期間中の者およびこれに準ずる従業員などは、加入させなくてもよいとされています。
掛金月額はどう決めればよいか
掛金月額の決め方に、唯一の正解はありません。中退共の公式Q&Aは、退職金額が掛金月額と納付月数で決まるため、掛金月額をどう決めるかがこの制度を利用する際の主要なポイントであるとしています。また、賃金と退職金はおおむね比例的な関係にあることから、多くの企業で一定の期間ごとに掛金月額を見直すのが一般的だと説明しています。
公式Q&Aが挙げる代表的な決め方は、次の3つです。
方式1:定額方式
定額方式とは、退職金を定年や勤続年数を基準にして目安を決め、そこから掛金月額を逆算する方法です。公式Q&Aには、勤続35年で1,000万円を退職金の目安とすれば、掛金月額は20,000円となるという例が載っています。具体的な退職金額は、中退共の「基本退職金額表」や退職金試算で確認できます。
方式2:賃金を基準にした方式
賃金をいくつかのグループに分け、それに応じて掛金を決める方法です。公式Q&Aの例では、賃金16万円未満は8,000円、16万円から20万円未満は10,000円、20万円から24万円未満は12,000円、24万円から28万円未満は14,000円、28万円から32万円未満は16,000円、32万円から36万円未満は18,000円、36万円から40万円未満は20,000円、40万円以上は22,000円とされています。
方式3:勤続年数を基準にした方式
勤続年数をいくつかのグループに分けて掛金月額を決める方法です。公式Q&Aの例では、2年未満は8,000円、2年から5年未満は10,000円、5年から10年未満は12,000円、10年から15年未満は14,000円、15年から20年未満は16,000円、20年から25年未満は18,000円、25年から30年未満は20,000円、30年以上は22,000円とされています。
これらはあくまで公式Q&Aが示す「例」です。自社の退職金規程や賃金テーブルに合わせて、無理のない水準を設計する必要があります。退職金の相場や設計の考え方は、当サイトの中小企業の退職金の相場と決め方の記事もあわせてご覧ください。
国の掛金助成制度にはどんな種類があるのか
中退共の掛金助成制度には、「新規加入掛金助成」と「月額変更(増額)助成」の2種類があります。いずれも、助成金を現金で支給する方法ではなく、掛金から助成額を免除する方法で行われます。助成を受けている間は、掛金月額から助成額を差し引いた金額が口座から振り替えられます。
新規加入掛金助成
新規加入掛金助成とは、中退共に新たに加入する事業主に対して、国が掛金の一部を一定期間助成する制度です。内容は次のとおりです。
・加入後4か月目から1年間、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)を国が助成します。
・短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)の加入者には、上記に加えて、掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円が上乗せされます。
たとえば、掛金月額が10,000円の従業員であれば、2分の1は5,000円で上限と同額のため、助成月額は5,000円です。掛金月額が8,000円なら2分の1の4,000円、掛金月額が20,000円の場合は2分の1が10,000円となりますが、上限の5,000円までが助成されます(いずれも制度の仕組みに基づく試算例です)。
次に該当する事業主は、新規加入助成の対象になりません。
・同居の親族のみを雇用する事業主
・社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主
・解散存続厚生年金基金から資産移換の申出を希望する事業主
・特定退職金共済事業を廃止した団体から資産引渡の申出を行う事業主
・合併等に伴い企業年金から資産移換の申出を行う事業主
・合併等に伴い中退共から企業年金へ資産を移換する目的で新たに退職金共済契約を締結した事業主であって、被共済者全員が資産移換のための契約解除をする事業主
月額変更(増額)助成
月額変更助成とは、すでに加入している従業員の掛金月額を増額する事業主に対して、国が増額分の一部を1年間助成する制度です。内容は次のとおりです。
・18,000円以下の掛金月額を増額変更する場合、増額分(増額前と増額後の掛金月額の差額)の3分の1を、増額月から1年間助成します。
・助成額の10円未満の端数は切り捨てです。
・増額前の掛金月額とは、過去に納付した最も高かった掛金月額です。
・20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象になりません。
・同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象になりません。
・増額による助成期間内(12か月)に掛金月額を減額した場合、月額変更助成は打ち切りになります。
・助成期間中に再度増額変更した場合は、前の月額変更助成は中止され、新しい月額変更助成が対象になります。
たとえば、掛金月額を10,000円から14,000円に増額する場合、増額分は4,000円です。その3分の1は1,333円余りですが、10円未満は切り捨てになるため、助成額は月1,330円となります(制度の仕組みに基づく試算例です)。
自治体による独自の補助金
中退共の公式サイトによれば、中退共に加入した企業に独自の補助金制度を設けている自治体等もあります。補助金制度を設けている自治体は、中退共の公式サイトの「掛金助成自治体等」のページに掲載されています。事業所の所在地の自治体に、制度があるか確認するとよいでしょう。
加入時・増額時に確認すべきこと
加入や増額の前に、次の順で確認すると手戻りを防げます。
ステップ1:加入できる企業か、誰を加入させるかを確認する
業種ごとの従業員数・資本金の条件を確認し、加入させる従業員の範囲を決めます。他の制度(特定業種退職金共済制度、小規模企業共済制度など)にすでに加入している従業員は、中退共に加入できません。
ステップ2:掛金月額を従業員ごとに決める
上で紹介した定額方式・賃金基準・勤続年数基準などの考え方を参考に、従業員ごとの掛金月額を決めます。将来の増額を前提にするのか、当初から目標額に近い水準にするのかも、あわせて検討します。
ステップ3:助成の対象かどうかを確認する
新規加入の場合は、新規加入助成の対象外となる事業主に当てはまらないかを確認します。増額の場合は、対象が18,000円以下の掛金月額の増額で、20,000円以上の掛金月額からの増額は対象外であることを踏まえ、増額前の掛金月額(過去に納付した最高額)を確認します。境目に近い金額の扱いは、中退共に事前に問い合わせると確実です。
ステップ4:申込書類を準備して提出する
新規加入に必要な書類は、退職金共済契約申込書(新規用)と預金口座振替依頼書です。申込書は最新の様式を使用します。必要に応じて、中小企業者であることの証明書や、短時間労働者であることの証明書などを添付します。提出先は、最寄りの金融機関(ゆうちょ銀行・農協・漁協・ネット銀行・外資系銀行を除く)または委託事業主団体の窓口です。申込金は必要ありません。金融機関等の窓口に提出した日が契約成立年月日となります。
ステップ5:掛金月額を見直す時期を決めておく
掛金月額は、事前に「月額変更申込書」を提出することで、加入後いつでも増額できます。減額できるのは、その従業員が同意した場合、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られます。そのため、最初に決めた金額が将来の負担になりすぎないかを確認しておくことが大切です。
掛金の税務上の扱いはどうなるのか
中退共の掛金は、法人企業の場合は損金(法人税法施行令第135条第1号)、個人企業の場合は必要経費(所得税法施行令第64条第2項)として、全額が非課税扱いとなります。また、従業員の給与所得にもなりません。これは、会社側の法人税(個人企業は所得税)と、従業員側の所得税・住民税の話です。社会保険料への影響は、この中退共のページには記載がないため、必要な場合は日本年金機構などの公的機関や専門家に確認してください。
なお、資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税には、外形標準課税が適用されるため、留意が必要だと中退共の公式サイトに注記されています。
ネクストプレナーズの見解
掛金月額を決める際は、まず「会社として毎月いくらまでなら無理なく負担し続けられるか」を先に決めることをおすすめします。助成金額から逆算して掛金月額を決めると、助成期間が終わったあとの負担感が大きくなりやすいためです。
また、新規加入助成も月額変更助成も、助成期間は1年間と限られています。助成は、あくまで制度を始めやすくするための後押しと捉え、助成期間が終わったあとの負担額で資金繰りを確認しておくことが大切だと考えます。
さらに、中退共は掛金月額で退職金が決まる仕組みのため、賃金が上がっていくなかで掛金月額を見直さないと、退職金規程に定める水準と、実際に支払われる退職金額との間にずれが生じることがあります。退職金規程と掛金月額をセットで定期的に見直す運用をおすすめします。
よくある質問
Q. 中退共の掛金は従業員にも負担してもらえますか?
A. できません。中退共の掛金は全額事業主が負担する仕組みで、掛金の一部でも従業員に負担させることはできません。
Q. 掛金月額は一度決めたら変更できませんか?
A. 増額は、事前に「月額変更申込書」を提出すれば、加入後いつでも可能です。減額は、その従業員が同意した場合、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られます。
Q. パートタイマーも中退共に加入できますか?
A. 加入できます。短時間労働者は、通常の16種類に加えて、2,000円・3,000円・4,000円の特例掛金月額でも加入でき、特例掛金(4,000円以下)の加入者には新規加入助成に上乗せ助成があります。申込時には「労働条件通知書(雇入通知書)」または「労働契約書」の写しが必要です。
Q. 国の助成は現金で振り込まれますか?
A. いいえ。助成は、掛金から助成額を免除する方法で行われます。助成期間中は、掛金月額から助成額を差し引いた額が口座振替されます。
Q. 掛金の助成は、どのくらいの期間受けられますか?
A. 新規加入掛金助成は加入後4か月目から1年間、月額変更助成は増額月から1年間です。
Q. 中退共の掛金は経費にできますか?
A. 法人企業の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として全額が非課税扱いとなり、従業員の給与所得にもなりません。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。助成の金額や条件は改正されることがあるため、加入や増額の前に、必ず中退共の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長
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出典
・掛金(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/seido/seido04.html
・制度の特色(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/seido/seido02.html
・加入の条件(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/seido/seido03.html
・加入手続き(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/tetuduki/tetuduki01.html
・Q&A 1-2-1 掛金助成制度(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-01/1-2-1.html
・Q&A 3-1-2 掛金月額の決め方(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-03/3-1-2.html
・Q&A 9-2-1 掛金の税法上の取扱い(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-09/9-2-1.html


