中退共の退職金はいくら?納付月数ごとの支給額と、解約しても掛金が戻らない理由
中退共(中小企業退職金共済制度)の退職金は、掛金月額と掛金の納付月数で決まり、納付月数が11月以下の場合は支給されません。また、掛金は全額を事業主が負担していますが、退職金を受け取る権利は従業員本人(死亡の場合は遺族)にあるため、従業員が短期間で退職したり、契約を解約したりしても、納めた掛金が会社に戻ることはありません。この記事では、中退共の加入中または加入を検討中の中小企業の事業主・経理担当者に向けて、退職金の額の仕組み、納付月数ごとの支給額の違い、掛金が戻らない理由を、中退共の公式ページに基づいて整理します。
中退共の退職金の仕組み
中退共の退職金とは、従業員が退職したときに、中退共から従業員本人へ直接支払われる退職金のことです。金額は、基本退職金と付加退職金の2本建てで、両方を合計したものが受け取る退職金になります。
・基本退職金:掛金月額と納付月数に応じて、固定的に定められている金額です。制度全体として予定運用利回りを1.0%として定められた額で、予定運用利回りは法令の改正により変わることがあるとされています。
・付加退職金:基本退職金に上積みされる金額で、運用収入の状況などに応じて定められます。掛金納付月数の43月目と、その後12か月ごとの基本退職金相当額に、厚生労働大臣が定めるその年の支給率を掛けた額を、退職時まで累計した総額です。
付加退職金の支給率は年度ごとに異なり、0の年度もあります。中退共の公式ページに掲載されている一覧では、令和7年度は0、令和8年度は0.0061とされています。付加退職金は毎年の運用状況に左右されるため、加入前の見積りや退職金規程の設計では、確定している基本退職金を基準に考えるのが現実的です。
納付月数によって退職金はどう変わるか
中退共の退職金は、納付月数が長くなるほど手厚くなる設計です。結論として、納付月数が11月以下なら支給なし、12月以上23月以下なら掛金納付総額を下回る額、24月以上42月以下なら掛金相当額、43月以上なら運用利息と付加退職金が加算されます。
納付月数ごとの支給の目安
中退共の公式ページでは、納付月数ごとの退職金について、次のように説明されています。
・11月以下:退職金は支給されません
・12月以上23月以下:掛金納付総額を下回る額になります(長期加入者の退職金を手厚くするため)
・24月以上42月以下:掛金相当額になります
・43月以上:運用利息と付加退職金が加算され、長期加入者ほど有利になります
なお、通算制度または他制度からの引継ぎを行っている場合は、11月以下でも支給される場合があるとされています。
掛金月額1万円の場合の試算例
中退共の基本退職金額表(別表1・別表2)には、掛金月額1,000円当たりの基本退職金額が納付月数ごとに示されています。ここでは、その額を10倍して、掛金月額10,000円の従業員の基本退職金を計算した例を挙げます。以下は当サイトが公式の金額表から計算した例で、付加退職金は含みません。実際の額は、中退共の試算サービスなどで確認してください。
・11月納付:掛金累計110,000円に対して、基本退職金は0円
・12月納付:掛金累計120,000円に対して、基本退職金は36,000円(1,000円当たり3,600円)
・23月納付:掛金累計230,000円に対して、基本退職金は117,000円(1,000円当たり11,700円)
・24月納付:掛金累計240,000円に対して、基本退職金は240,000円(1,000円当たり24,000円)
・43月納付:掛金累計430,000円に対して、基本退職金は430,100円(1,000円当たり43,010円)
・60月納付(5年):掛金累計600,000円に対して、基本退職金は608,200円(1,000円当たり60,820円)
・120月納付(10年):掛金累計1,200,000円に対して、基本退職金は1,265,600円(1,000円当たり126,560円)
この例から、加入して1年未満では支給がなく、2年未満では掛金累計を下回る額しか支給されないこと、3年半(43月)を過ぎたあたりから掛金累計を上回り始めることが分かります。長く勤める従業員のための制度である、という中退共の設計が数字にも表れています。
加入1年未満で退職したら、掛金は会社に戻るのか
加入して1年未満で従業員が退職した場合、退職金は支給されず、それまでに納めた掛金も事業主には戻りません。中退共のQ&Aでは、退職金が支給されない場合の掛金や、退職金が掛金総額を下回る場合の差分は、中退共制度全体の長期加入者の退職金の支払い財源に組み込まれ、事業主には返金されないと説明されています。
掛金が会社に戻らない理由は、次の3点に整理できます。
・中退共の掛金は全額を事業主が負担する決まりで、掛金の一部でも従業員に負担させることはできないとされています。制度は、掛金を共同で積み立てて、長期加入者の退職金に回す仕組みです
・中退共から支払われる退職金を受け取る権利は、従業員本人またはその遺族に限られます。退職金額が会社の退職金規程の額を超えても、その差額を会社が受け取ることはできません
・退職金が支給されない期間の掛金や、掛金総額を下回る部分の差額は、制度全体の財源に組み込まれます
ただし、例外があります。従業員が退職した後も退職届の提出が遅れ、退職月の翌月分以降の掛金が引き落とされた場合は、その分は後日、事業主の預金口座に返されます。退職が決まったら、被共済者退職届をすみやかに中退共本部保全課へ送ることが大切です。退職届の手続きの詳細は、当サイトのコラム「中退共の退職手続き」で整理しています。
契約を解約したときの扱い
中退共でいう解約とは、従業員との雇用関係が続いているのに、事業主が従業員の同意を得て退職金共済契約を解除することなどをいいます。退職(雇用関係の終了)とは区別されています。
解約の条件
事業主から退職金共済契約を解除できるのは、従業員の同意が得られたとき、または掛金納付の継続が困難であると厚生労働大臣が認めたときに限られます。解除は将来に向かってのみ効力を生じ、解除通知書が中退共本部契約課に到着した日をもって契約解除となります。さかのぼって解除することはできません。
解約手当金と退職金の違い
12か月以上の掛金を納付している従業員には、解約手当金が支給されます。解約手当金も退職金も、従業員本人が中退共本部に請求し、本人に直接支払われます。額は、どちらも掛金月額と納付月数に応じて算定されます。ただし、掛金助成を受けた従業員の解約手当金は、退職金の額から、掛金助成金相当額または解約手当金額の3割のうち少ない額が減額された額になります。
税の扱いも異なります。退職金(一時金払いのもの)は税法上「退職手当等」として他の所得と区分して課税され、解約手当金は「一時所得」として扱われます。一時所得は、その年の他の一時所得と合算し、50万円の特別控除を引いた残額が課税の対象です。解約手当金を受け取った年は、確定申告が必要になる場合があります。具体的な税額は、最寄りの税務署に確認してください。退職所得の源泉徴収の考え方は、当サイトのコラム「退職金の源泉徴収の手順」も参考になります。
退職理由で金額は変わるのか、会社の規程とどう合わせるか
中退共から支払われる退職金は、退職理由が事業主都合か自己都合かで変わることはありません。額は掛金月額と納付月数だけで決まります。懲戒解雇などの場合は、厚生労働大臣の認定を受けたうえで、退職金を減額することができるとされています。
すでに会社に退職金規程がある場合は、中退共制度に合うように規程を見直すか、規程に合わせた掛金月額に設定するなどの調整が適当だと、中退共のQ&Aで案内されています。たとえば、規程では自己都合退職の支給率を下げているのに、中退共の退職金は退職理由に関係なく同額になる、という食い違いが起こり得ます。掛金月額の決め方と国の助成制度は、当サイトのコラム「中退共の掛金の決め方と国の助成制度」で整理しています。
加入中の事業主が確認しておきたいこと
退職金のしくみを踏まえて、次の項目を確認しておくと、退職者が出たときに慌てずに済みます。
・加入している従業員ごとの掛金月額と納付月数を把握しているか(中退共から年1回送られる「掛金納付状況票及び退職金試算票」で確認できます)
・退職が見込まれる従業員について、中退共に退職金の試算を依頼する手順を知っているか(試算結果は事業所住所に郵送されます)
・納付月数が11月以下の従業員が退職するとき、退職金が支給されないことを、本人に事前に説明できるか
・他の中退共加入企業などからの転職者がいる場合、通算の申出ができる可能性を確認したか(通算には、前の企業を退職した後3年以内に新しい企業で加入することなどの条件があります)
・会社の退職金規程と、中退共の退職金額の関係が整理されているか
ネクストプレナーズの見解
中退共の退職金は、納付月数が短いうちは掛金累計を下回り、長く勤めるほど増える設計のため、短期離職が多い職場では、会社が負担した掛金の一部が本人に渡らない結果になりやすいと考えます。入社直後の従業員に制度の仕組みを説明するとき、「1年未満では支給されない」「掛金は会社に戻らない」という2点を、あらかじめ社内の説明資料に入れておくことをおすすめします。また、退職金規程で定める額と中退共の額に差が出る場合は、どちらを基準にするかを規程に明記しておくと、退職時のトラブルを避けやすくなると考えます。
よくある質問
Q. 中退共の退職金は、何か月加入すれば支給されますか。
A. 納付月数が12月以上で支給されます。11月以下は退職金が支給されません。ただし、12月以上23月以下の間は、掛金納付総額を下回る額になります。
Q. 中退共を解約すると、納めた掛金は会社に戻りますか。
A. 戻りません。退職金が支給されない場合の掛金や、退職金が掛金総額を下回る差分は、制度全体の長期加入者の退職金の財源に組み込まれ、事業主には返金されません。
Q. 退職金が会社の規程の額より多い場合、差額は会社が受け取れますか。
A. 受け取れません。中退共から支払われる退職金を受け取る権利は、従業員本人またはその遺族に限られているため、超える金額を会社が受け取ることはできません。
Q. 自己都合で退職した場合、中退共の退職金は少なくなりますか。
A. 少なくなりません。中退共の退職金は、事業主都合か自己都合かで変わらず、掛金月額と納付月数に応じて決まります。
Q. 付加退職金は必ず支給されますか。
A. 支給されるとは限りません。付加退職金は運用収入の状況などに応じて定められ、支給率は厚生労働大臣が年度ごとに決めます。公式ページの一覧には、支給率が0の年度もあります。
Q. 解約手当金は、退職金と同じ税金の扱いですか。
A. 同じではありません。退職金(一時金払い)は退職手当等として課税され、解約手当金は一時所得として扱われます。一時所得は、他の一時所得と合算して50万円を引いた残額が課税の対象になります。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。また、金額表や付加退職金の支給率は変更されることがあるため、実際の退職金額は、中退共の公式ページや試算サービスで最新の内容をご確認ください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
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出典
・退職金(制度について)(中小企業退職金共済事業本部)
・基本退職金額表(中小企業退職金共済事業本部)
・別表1(納付月数23月以下の基本退職金額)(中小企業退職金共済事業本部)
・別表2(納付月数24月以上の基本退職金額)(中小企業退職金共済事業本部)
・加入後1年未満で退職した場合は退職金は支給されますか?また、それまで掛けた掛金は事業主に戻ってきますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金共済契約を解約したいのですがどうすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金と解約手当金はどのように違うのですか?(中小企業退職金共済事業本部)
・解約手当金は税法上どのように取り扱われますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職理由により退職金額は変わりますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・中退共から支払われる退職金額が会社の退職金規程による支給額を超える場合は、その差額を事業主(会社)が受け取ることができますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金額の試算をしてほしいのですがどうすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
・通算制度(中小企業退職金共済事業本部)
・掛金(中小企業退職金共済事業本部)




