中退共の掛金を減額するには|従業員の同意と厚生労働大臣の認定、申込みの期限を整理
業績の悪化や資金繰りの都合で、中退共(中小企業退職金共済制度)の掛金を下げたいと考える経営者・経理責任者の方は少なくありません。結論から言うと、中退共の掛金月額の減額は、会社の判断だけでは行えません。減額できるのは、その従業員が同意した場合、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られます。この記事では、中退共の掛金を減額するときの条件、同意の取り方、同意が得られないときの認定申請、申込みの期限と注意点を、中退共と厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。
中退共の掛金は会社の都合で下げられるのか
中退共の掛金は、会社の都合だけでは下げられません。減額には、従業員(被共済者)本人の同意、または厚生労働大臣の認定のどちらかが必要です。
この定めは、中小企業退職金共済法第9条第2項に置かれています。同項は、中退共(勤労者退職金共済機構)は共済契約者(事業主)からの掛金月額の減少の申込みについて、第8条第3項各号に掲げる場合を除き承諾してはならない、と定めています。第8条第3項各号とは、被共済者の同意を得たとき、および掛金の納付を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたときです。
一方、増額は、掛金月額の種類の範囲内で、いつでも行うことができます。減額だけに条件が付いている点が、手続きを考えるうえでの出発点です。
掛金月額の減額とは何か
掛金月額の減額とは、従業員ごとに定めている掛金月額を、現在より低い金額(掛金月額の種類の範囲内)に変更することです。中退共の掛金月額は、5,000円から30,000円までの16種類から従業員ごとに選べます。短時間労働者(パートタイマー等)は、これに加えて特例として2,000円・3,000円・4,000円でも加入できます。ただし、特例掛金への変更は、短時間労働者として加入した方に限られます。
掛金月額の決め方そのものは、当サイトの中退共の掛金の決め方と国の助成制度の記事で整理しています。
掛金月額を減額できるのは、どんな場合か
減額できるのは、次の2つの場合に限られます。
・その従業員が減額に同意した場合
・現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると、厚生労働大臣が認めた場合
従業員の同意がある場合
まず検討するのは、従業員本人の同意を得る方法です。従業員ごとに掛金月額が決まっているため、減額したい従業員のそれぞれについて同意が必要です。同意の確認方法は、次の「減額の手続き」で説明します。
同意が得られず、厚生労働大臣の認定を受ける場合
従業員の同意が得られないときは、現在の掛金月額を継続することが著しく困難である旨の厚生労働大臣の認定書が必要です。中退共のQ&Aは、認定申請について、厚生労働省の勤労者生活課にお問い合わせくださいと案内しています。
どのような状態が「著しく困難」にあたるかの具体的な基準は、今回確認した中退共・厚生労働省の公表ページには書かれていませんでした。認定を検討する場合は、申請前に厚生労働省の窓口へ個別に確認してください。
掛金月額を減額する手続きの流れ
減額の手続きは、次のステップで進めます。
ステップ1:減額したい従業員と新しい掛金月額を決める
誰の掛金月額を、いくらに下げるのかを決めます。新しい金額は、掛金月額の種類(5,000円から30,000円までの16種類。短時間労働者の特例掛金を除く)の中から選びます。
ステップ2:従業員の同意を得て、証明できる形にする
同意を証明する方法は、次の2つのうち、いずれかです。
・掛金月額変更申込書の減額同意確認欄に、被共済者本人がフルネームで署名する
・掛金月額変更申込書に「同意があったことを証する書面」を添付する
「同意があったことを証する書面」とは、掛金減額の同意について共済契約者と被共済者が電子メールでやりとり(必ず引用返信)をし、被共済者の同意を得たメールを印刷したものです。メールの文面や必須項目は、中退共が公開している電子メールのやりとり例で確認できます。
ステップ3:「掛金月額変更申込書」に記入する
「退職金共済手帳」の1枚目にある「掛金月額変更申込書」に必要事項を記入します。中退共所定の様式以外の書式では、掛金月額の変更は受け付けられません。変更年月と変更後の掛金月額の書き方は、手帳の裏面にある記入例を参照します。
ステップ4:期限までに中退共本部へ提出する
減らしたい月の前月15日(たとえば4月分の掛金から減額したい場合は3月15日)までに、封書で中退共本部保全課へ送ります。15日が土日祝祭日の場合は翌営業日です。「掛金月額変更申込書」はハガキではなく、封筒に入れずに投函すると中退共へ届かないため、手続きができません。受付は、変更したい月の2か月前から可能です。電子申請の場合は、掛金月額変更申請フォームから手続きします。
ステップ5:新しい手帳を受け取り、差し替える
減額が行われると、新しい掛金月額が表示された「退職金共済手帳」が送られてきます。「退職金共済契約関係書類綴」にファイルされている手帳の1枚目と差し替えます。
減額する前に確認したい注意点
減額の申込みの前に、次の点を確認しておくと、想定外の事態を防げます。
・過去にさかのぼっての減額はできません。変更できるのは将来の月分だけです
・掛金が前納されている場合、その前納されている月分は、掛金月額を減額できません
・増額による月額変更助成の助成期間内(12か月)に掛金月額を減額すると、月額変更助成は打ち切りになります
・申込みの期限は、変更したい月の前月15日です。期限を過ぎると、その月分には間に合いません
・退職金の額は、掛金月額と掛金納付月数に応じて計算されます(中小企業退職金共済法第10条第2項)
最後の点について、減額後の月は、低い掛金月額で掛金が積み上がることになります。そのため、将来の退職金額の見込みも下がると考えられます。減額後にいくらになるかは、厚生労働省が公表している基本退職金額表などで確認し、従業員にも説明しておくことが大切です。なお、掛金納付月数ごとの支給額の仕組みは、当サイトの中退共の退職金はいくら?の記事も参考になります。
減額ではなく解約を選ぶと、どうなるのか
掛金を下げるのではなく、従業員の雇用を続けたまま中退共の契約を解除することを、中退共では「解約」と呼びます。解約も、減額と同じく自由にはできません。
・条件:従業員の同意が得られたとき、または掛金納付の継続が困難であると厚生労働大臣が認めたときに限られます
・手続き:同意が得られた場合は「退職金共済契約解除通知書」を中退共本部契約課に送ります。同意が得られない場合は、厚生労働大臣の認定申請が必要で、中退共本部契約課に問い合わせます
・効力:将来に向かってのみ生じ、解除通知書が中退共本部に到着した日をもって契約解除となります。さかのぼって解除することはできません
・支払い:12か月以上の掛金を納付している従業員には、解約手当金が支給されます。解約手当金は、従業員本人が請求し、本人に直接支払われます
・助成を受けた者の解約手当金:退職金の額から、掛金助成金相当額または解約手当金額の3割のどちらか少ない額が減額された額となります
解約をすると、会社の退職金の積立が止まり、従業員の期待にも影響します。資金繰りの一時的な悪化であれば、まず減額で対応できないかを検討するのが、多くの場合の現実的な順序と考えられます。
ネクストプレナーズの見解
掛金の減額を考えるときは、まず従業員への説明を丁寧に行うことをおすすめします。同意は、会社が一方的に取り付けるものではなく、従業員本人が納得したうえで署名またはメールで示すものだからです。減額後の退職金の見込みがどう変わるかを示しながら説明すると、話が進みやすいと考えます。
また、掛金月額を退職金規程の支給額と結び付けている会社では、掛金を下げる前に、規程との整合を確認しておくことをおすすめします。規程と実際に支払われる退職金額にずれが出ると、退職時にトラブルになりかねないためです。資金繰りが一時的に厳しいだけの場合は、減額する期間と、改善後に増額して元に戻す時期をあらかじめ決めておくことも大切だと考えます。
よくある質問
Q. 中退共の掛金は、会社の判断だけで減額できますか?
A. できません。減額は、その従業員が同意した場合、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られます。
Q. 従業員の同意は、どのように証明しますか?
A. 掛金月額変更申込書の減額同意確認欄に被共済者本人がフルネームで署名するか、同意を得た電子メール(引用返信のやりとり)を印刷して申込書に添付します。
Q. 従業員が同意してくれないときは、どうすればよいですか?
A. 現在の掛金月額を継続することが著しく困難である旨の厚生労働大臣の認定書が必要です。認定申請については、厚生労働省の勤労者生活課に問い合わせます。
Q. 掛金月額の減額は、いつまでに申し込めばよいですか?
A. 減らしたい月の前月15日までに、「掛金月額変更申込書」を中退共本部保全課へ送ります。たとえば4月分から減額する場合は3月15日です。15日が土日祝祭日の場合は翌営業日になります。
Q. 過去の月にさかのぼって減額できますか?
A. できません。掛金月額の変更は将来の月分についてのみ可能で、過去にさかのぼっての変更はできません。
Q. 掛金を減額すると、国の月額変更助成はどうなりますか?
A. 掛金月額を増額した月から1年間(12か月)の助成期間内に減額した場合、月額変更助成は打ち切りになります。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。様式や手続きの内容は変更されることがあるため、申込みの前に、必ず中退共の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長
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出典
・掛金(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/seido/seido04.html
・月額変更の手続き(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/keiyakusha/tetuduki/tetuduki03.html
・Q&A 3-1-3 掛金月額を変更するときはどうすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-03/3-1-3.html
・Q&A 3-1-4 遡って掛金月額を変更することはできますか?(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-03/3-1-4.html
・Q&A 5-3-1 退職金共済契約を解約したいのですがどうすればいいですか?(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-05/5-3-1.html
・Q&A 5-3-2 退職金と解約手当金はどのように違うのですか?(中小企業退職金共済事業本部)
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/faq/qa-05/5-3-2.html
・退職金の金額(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/taisilyokukin_kyousai/ippanchuutai/taishokukin_kingaku.html
・中小企業退職金共済法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000160




