ホーム > コラム一覧 > 企業年金の掛金は損金になる?中退共・DB・企業型DCの法人税の扱いと従業員の課税

コラム

Columns

一覧に戻る

2026年10月21日

企業年金の掛金は損金になる?中退共・DB・企業型DCの法人税の扱いと従業員の課税

企業年金や退職金の掛金が損金になるのかは、制度を比べるときに経営者・経理責任者の方からよく聞かれる疑問です。結論から言うと、中退共・特定退職金共済(特退共)・確定給付企業年金(DB)の掛金と、企業型確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金は、国税庁の整理では、いずれも事業主の損金(個人事業の場合は必要経費)に算入され、従業員には掛金を支出した時点で給与として課税されません。この記事では、制度ごとの扱いの共通点と違い、従業員側の課税、そして所得税・住民税・社会保険料を区別して確認すべき点を整理します。

企業年金の掛金は損金算入できるのか:結論
中退共・特退共・DB・企業型DCの事業主掛金は、いずれも事業主の損金(個人事業主は必要経費)に算入できます。国税庁のタックスアンサー No.5231(令和8年4月1日現在法令等)が、この4つの制度の掛金について、事業主の課税所得の計算上、損金の額または必要経費に算入されると示しています。

この記事の要点
・事業主側(法人税・所得税):法人は損金、個人事業主は必要経費に算入される
・従業員側(所得税):事業主が掛金を支出した時点では、給与として課税されない
・注意点:損金になることと、住民税・社会保険料の扱いは別の問題。分けて確認する


なお、社内に積み立てる退職金や民間の保険商品など、この4つ以外の仕組みは別の取扱いになることがあります。ここで説明するのは、上記の制度に基づく掛金の扱いです。

損金算入とは何か
損金算入とは、法人税の課税所得を計算するときに、支出した金額を損金(税務上の費用に当たるもの)に含めることです。個人事業主の場合は、同じ考え方を「必要経費に算入する」と呼びます。

ここで押さえておきたいのは、損金になることと「得をすること」は別だという点です。損金算入で小さくなるのは課税所得であり、掛金として支払った資金は従業員の退職後の給付の原資として拠出されます。掛金を損金にするために制度へ加入するのではなく、従業員の退職後の備えを会社としてどう用意するかを決めたうえで、税務上の扱いを確認する、という順序が基本です。

制度別に見る掛金の税務上の扱い
中退共(中小企業退職金共済)
中退共の掛金は、法人企業の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として全額が非課税扱いとなります。従業員の給与所得にもなりません。中退共の公式Q&Aでは、法人は法人税法施行令第135条第1号、個人企業は所得税法施行令第64条第2項が根拠として示されています。また、資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税には外形標準課税が適用されるため、留意するよう注意書きがあります。

掛金の決め方や国の助成制度は、中退共の掛金の決め方と国の助成制度で整理しています。

特定退職金共済(特退共)
特退共とは、所得税法施行令第74条第5項に規定する特定退職金共済団体が行う退職金共済制度のことです。国税庁のNo.5231では、この団体の制度に基づいて支出した掛金が、中退共と同じ並びで損金または必要経費に算入されるものとして示されています。中退共との違いや併用の考え方は、特定退職金共済(特退共)とはで解説しています。

確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金(DB)とは、あらかじめ給付の算定方法が決まっている企業年金のことです。確定給付企業年金法第3条第1項に規定する規約に基づいて支出した掛金は、事業主の損金または必要経費に算入されます。厚生労働省の資料では、DBの掛金は事業主拠出が基本で、加入者が同意した場合は加入者拠出も可能とされています。加入者が掛金の一部を負担した場合、その部分は生命保険料控除の対象になります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型DCとは、事業主が掛金を拠出し、加入者自身が運用方法を決める企業年金のことです。確定拠出年金法第4条第3項に規定する企業型年金規約に基づく事業主掛金は、全額が損金に算入されます。規約で定めた場合に加入者が上乗せして拠出できるマッチング拠出の加入者掛金は、全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象です。

企業型DCには、事業主掛金の拠出限度額が定められています。厚生労働省の資料では、DBなど他制度の掛金相当額を踏まえて限度額が決まる仕組みが示されており、近年は見直しが続いているため、金額は厚生労働省の最新のページで確認してください。

制度別の比較
・中退共:事業主の掛金は法人は損金、個人企業は必要経費。従業員の給与所得にならない
・特退共:特定退職金共済団体の制度に基づく掛金は、損金または必要経費。従業員は掛金支出時に給与課税されない
・DB:規約に基づく掛金は損金または必要経費。加入者が負担した分は生命保険料控除の対象
・企業型DC:事業主掛金は全額損金。マッチング拠出の加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象。事業主掛金には拠出限度額がある

従業員側の課税はどうなるか
掛金を拠出するとき
事業主が掛金を拠出した時点では、従業員は給与として課税されません。これは国税庁のNo.5231が、中退共・特退共・DB・企業型DCのいずれについても示している共通の扱いです。

給付を受け取るとき
課税が生じるのは、主に給付を受け取る段階です。
・中退共の一時金:退職手当等として扱われ、退職所得控除の適用対象になる。他の所得とは別に税額が計算される
・DBの退職年金:公的年金等に該当し、雑所得として課税される
・DBの退職一時金:みなし退職手当等に該当し、退職所得として課税される
・企業型DC:年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になる

退職所得の源泉徴収の手順や、退職所得控除の計算方法は、退職金の源泉徴収の手順をご覧ください。

積立金に対する課税
信託銀行等に積み立てられている退職年金等積立金には、原則として毎年1パーセントの税率で法人税が課税されます。ただし、平成11年4月1日から令和11年3月31日までの間に開始する事業年度の退職年金等積立金には、法人税が課されないこととされています。確定拠出年金についても、積立金の特別法人税は現在、課税が停止されていると厚生労働省が示しています。

所得税・住民税・社会保険料は分けて確認する
掛金の税務上の扱いを確認するときは、所得税・住民税・社会保険料のどれについての話なのかを区別することが大切です。
・法人税・所得税:国税庁のNo.5231が、事業主の損金・必要経費算入と、従業員への給与課税がないことを示している
・住民税:本記事で確認できた国税庁の資料は法人税と所得税に関するものです。住民税の扱いは、市区町村や税理士に確認してください
・社会保険料:健康保険・厚生年金保険の保険料は、標準報酬月額に基づいて決まります。日本年金機構は、標準報酬月額の対象となる報酬を「労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのもの」とし、臨時に受けるものなどは含めないと説明しています

特に、給与の一部を掛金に振り替える設計にする場合は、給与が減ることで標準報酬月額や従業員の手取り、将来の給付に影響が出る可能性があります。「損金になる」ことを理由に、社会保険料や従業員の手取りへの影響まで同じ扱いだと決めつけず、導入前に年金事務所や健康保険組合、運営管理機関などに確認することをおすすめします。

経理責任者が確認する手順
掛金の扱いを社内で整理するときは、次の順序で確認すると抜けが少なくなります。

ステップ1:どの制度の掛金かを確認する。中退共・特退共・DB・企業型DCのどれに当たるか、契約書や規約で確認します。

ステップ2:誰が拠出する掛金かを確認する。事業主掛金は損金・必要経費、従業員が負担する掛金は従業員側の控除(DBは生命保険料控除、企業型DCは小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。

ステップ3:企業型DCは拠出限度額の範囲内かを確認する。限度額は厚生労働省の最新のページで確認します。

ステップ4:法人か個人事業かを確認する。法人は損金、個人事業は必要経費として処理します。

ステップ5:住民税・社会保険料への影響を、税理士・社会保険労務士・年金事務所などに個別に確認する。

ネクストプレナーズの見解
掛金が損金になることは、制度選びの前提条件にすぎないと考えます。中退共・特退共・DB・企業型DCは、損金算入という点ではおおむね同じ扱いのため、税務だけでは違いが出にくく、むしろ積立の目的、会社の資金繰り、従業員への説明のしやすさ、運営の事務負担で比べるほうが実務的です。また、制度ごとの税務を整理する際は、法人税・所得税と、住民税・社会保険料を混ぜないことをおすすめします。税の効果を従業員へ説明するときは、確認できた範囲だけを正確に伝えることが、後のトラブルを避けるうえで大切だと考えています。

よくある質問
Q. 中退共の掛金は経費になりますか?
A. はい、法人は損金、個人企業は必要経費として全額が非課税扱いになります。中退共の公式Q&Aで、従業員の給与所得にもならないと示されています。

Q. 企業型DCの事業主掛金は、従業員の給与として課税されますか?
A. 国税庁の整理では、事業主が掛金を支出した時点では給与として課税されません。ただし、住民税や社会保険料の扱いはこの整理とは別に確認が必要です。

Q. 従業員が掛金の一部を負担した場合の税務上の扱いは?
A. DBの加入者掛金は生命保険料控除、企業型DCの加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象になります。

Q. 退職金や年金を受け取るときの税金は、制度によって違いますか?
A. 一時金は退職所得(退職所得控除)、年金は公的年金等(DBは雑所得、企業型DCは公的年金等控除)として課税される点は共通しています。中退共の一時金は退職手当等として退職所得控除の対象です。

Q. 企業型DCの掛金に上限はありますか?
A. はい、事業主掛金には拠出限度額があります。DBなど他制度の掛金相当額との関係で決まり、見直しが続いているため、厚生労働省の最新のページで確認してください。

Q. 社内積立や民間の保険で退職金を準備する場合も、同じ扱いになりますか?
A. 同じとは限りません。国税庁のNo.5231が示すのは、中退共・特退共・DB・企業型DCの掛金です。それ以外の仕組みは別の取扱いになることがあるため、税理士に個別に確認してください。

監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長
プロフィールを見る

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

出典
・No.5231 確定給付企業年金等に係る課税関係(国税庁)
・掛金は税法上どのように取り扱われますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・退職金(一時金払い)は税法上どのように取り扱われますか?(中小企業退職金共済事業本部)
・確定拠出年金制度の概要(厚生労働省)
・標準報酬月額の対象となる報酬とは何ですか。(日本年金機構)

お問い合わせはこちらから
▲ PAGE TOP