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2026年10月28日

確定給付企業年金の規約型・基金型・総合型の違い|加入者300人の要件と中小企業が選べる形態

確定給付企業年金(DB)には「規約型」と「基金型」の2つの実施形態があり、複数の企業が共同で実施する「総合型」という呼び方もあります。中小企業の経営者や人事責任者の方からは、「確定給付企業年金の総合型は何が違うのか」「うちの規模では基金型を選べないのか」といったご質問をよくいただきます。結論から言うと、基金型の設立には加入者300人以上の要件がある一方、規約型には加入者数の要件がなく、従業員50〜300名の企業でも実施形態の選択肢はあります。この記事では、確定給付企業年金法(DB法)の条文と企業年金連合会の用語集で確認できる範囲で、3つの違い、人数要件、導入までの流れ、検討時に確認したい点を整理します。

確定給付企業年金の実施形態は何種類あるか:結論
法律上の実施形態は、規約型と基金型の2種類です。総合型は法律上の区分ではなく、複数の事業所が共同して実施するタイプの一般的な呼称です。

この記事の要点
・規約型:労使の同意で規約を作り、厚生労働大臣の承認を受けて実施する。加入者数の要件はない
・基金型:厚生労働大臣の認可を受けて企業年金基金(別法人)を設立して実施する。設立には加入者300人以上(共同設立は合算で300人以上)が要件
・総合型:複数の厚生年金適用事業所が共同して実施するものの一般的な呼称。中小企業が業種でまとまって実施するものが多い


確定給付企業年金法には「総合型」という語は出てきません。そのため、総合型を検討する場合も、実際には「基金型を共同で設立する形」や「規約型を共同で実施する形」のどれに当たるのかを、制度の運営団体に確認する必要があります。

確定給付企業年金(DB)とは
確定給付企業年金(DB)とは、事業主が従業員と給付の内容をあらかじめ約束し、高齢期に従業員がその内容に基づいた給付を受けられる企業年金制度のことです。企業年金連合会の用語集では、給付内容があらかじめ決まっていることから「給付建て年金」とも呼ばれ、年金資産は一括して運用され、運用リスクは企業が負担すると説明されています。

法第2条は、確定給付企業年金を「厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して」実施する年金制度と定めています。「単独で又は共同して」とあるとおり、1社だけで実施する形のほか、複数の事業主が共同して実施する形も法律上想定されています。

退職金の準備方法として、中退共や特退共などの外部積立制度と比較している場合は、中退共の掛金の決め方と国の助成制度や、特定退職金共済(特退共)とはもあわせてご覧ください。

規約型とは
規約型とは、労使の合意で作成した規約について厚生労働大臣の承認を受けて実施する確定給付企業年金のことです。事業主が信託会社や生命保険会社などと契約を結び、会社の外で年金資産を管理・運用して給付を行います。企業年金連合会の用語集では、実施に当たって加入者数の要件はないとされています。

規約型の手続きの特徴
・同意の相手:実施する事業所の厚生年金保険の被保険者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ被保険者の過半数を代表する者の同意が必要です(法第3条第1項)
・契約の相手:承認を受けた事業主は、積立金の管理・運用について、信託会社・信託業務を営む金融機関、生命保険会社、農業協同組合連合会(生命共済)のいずれかと契約を結びます(法第65条第1項)
・周知:承認を受けたときは、遅滞なく、規約を被保険者に周知させる必要があります(法第5条第3項)

基金型とは
基金型とは、労使の合意で規約を作成し、厚生労働大臣の認可を受けて、母体企業とは別の法人格を持つ企業年金基金を設立して実施する確定給付企業年金のことです。基金が年金資産を管理・運用し、給付を行います。

基金型の特徴
・法人である:基金は法人とされ、名称に「企業年金基金」の文字を用いなければなりません(法第9条・第10条)
・代議員会を置く:基金には代議員会が置かれ、定数の半数は事業主側、残り半数は加入者が互選します(法第18条)。規約の変更や毎事業年度の予算などは、代議員会の議決が必要です(法第19条)
・設立の人数要件:設立認可の要件として、常時300人以上の加入者となるべき厚生年金保険の被保険者を使用していること、または使用すると見込まれることが求められます。複数の事業主が共同して設立する場合は、合算して300人以上です(法第12条第1項第4号・第5号、施行令第6条)

規約型が「会社が外部の信託銀行や生命保険会社と契約して運営する」形であるのに対し、基金型は「別法人を作って運営する」形です。そのため、基金型は別法人としての設立手続きに加え、代議員会の運営など組織としての運営が必要になります。

総合型とは
総合型とは、確定給付企業年金などで、複数の厚生年金適用事業所が共同して実施しているタイプの一般的な呼称です。企業年金連合会の用語集では、人的関係・資本関係の緊密な複数の事業所で設立される、いわゆる連合設立のものは含まず、中小企業が業種でまとまって実施するものが多いと説明されています。

同じ用語集には、確定給付企業年金では基金型の場合の人数要件(300人以上)のみが要件になっており、旧来の厚生年金基金にあったような強い指導力をもつ母体組織などの要件はない、とも書かれています。

ここで大切なのは、総合型は「ひとつの設立形態の名前」ではなく、複数の事業所で共同して実施する形の総称だという点です。条文上、基金を共同して設立する場合は合算で300人以上を満たせばよく(法第12条第1項第5号)、規約型についても、共同して実施している場合の定めが置かれています(法第80条)。1社では基金型の人数要件に届かない企業が、他の企業と共同することで基金を設立する、あるいは共同の枠組みの中で実施する、という選択ができるのが総合型の考え方です。

規約型・基金型・総合型の比較
・位置づけ:規約型と基金型は法律上の区分。総合型は共同実施の一般的な呼称
・国の手続き:規約型は厚生労働大臣の承認、基金型は厚生労働大臣の認可
・運営の主体:規約型は事業主が信託会社・生命保険会社等と契約して運営。基金型は別法人の企業年金基金が運営
・人数要件:規約型は加入者数の要件なし。基金型は300人以上(共同設立は合算で300人以上)
・意思決定:規約型は事業主が規約の変更の承認を申請する際に労働組合等の同意を得る。基金型は代議員会の議決を経る
・総合型の特徴:複数の中小企業が共同で実施する形が多く、自社だけで人数要件を満たせない企業も参加しやすい

なお、厚生労働大臣の承認・認可の事務の権限の一部は、地方厚生局長に委任されています。関東信越厚生局の案内では、規約型は承認申請、基金型は認可申請、と手続きが分けて示されています。

従業員50〜300名の中小企業はどの形態を選べるか
従業員が300人未満の企業が、自社だけで基金型を設立することは、条文上の人数要件を満たさないため、できません。選択肢は、規約型を自社で実施するか、他の事業主と共同して実施する形(総合型)を検討するかになります。

ここで確認したいのは、300人という数え方です。条文は「加入者となるべき厚生年金保険の被保険者」を常時使用していることを要件としています。規約で加入資格を定める場合は、従業員数と加入者数が一致しない可能性があります。300人前後の企業が単独の基金型を検討するときは、自社の加入者の見込み数が要件を満たすかを、制度を取り扱う金融機関や地方厚生局に確認してください。

また、基金型には、設立後の人数要件に関する規定もあります。基金が実施事業所を減少させる場合、減少後も加入者の数が300人以上である、または300人以上となることが見込まれることが求められます(法第78条第2項)。共同で運営する基金では、参加企業の入れ替わりが全体の人数要件に影響する点に注意が必要です。

導入までの流れ
実施形態を決めたあとの大まかな流れを、条文に沿って整理します。

ステップ1:退職金制度の目的と対象者を整理する。退職金を年金で準備したいのか、一時金が中心か、既存の退職金規程や外部積立制度との関係をどうするかを、社内で決めます。

ステップ2:実施形態を選ぶ。加入者の見込み数を踏まえて、規約型を単独で実施するか、共同で実施する総合型にするかを検討します。

ステップ3:労使の同意を得て規約を作成する。過半数労働組合、なければ過半数代表者の同意を得たうえで、規約を作成します(法第3条第1項)。

ステップ4:承認または認可を申請する。規約型は規約の承認、基金型は基金設立の認可を申請します。

ステップ5:承認後の手続きを行う。規約型は、承認を受けた規約を被保険者に周知し、積立金の管理・運用に関する契約を結びます。基金型は、設立の認可を受けた時に基金が成立します(法第13条)。

総合型を検討するときに確認したい点
複数の事業主が共同で実施する形では、自社の都合だけで制度を決められない場面があります。条文から確認できる範囲で、事前に確認しておきたい点を挙げます。

・掛金の見直し:掛金は、将来にわたって財政の均衡を保てるように計算する必要があり、少なくとも5年ごとに再計算します。加入者の数が著しく変動した場合なども、速やかに再計算が必要です(法第57条・第58条)
・参加企業が減るとき:実施事業所を増減させる場合は、その増減に係る事業所の事業主の全部の同意と労働組合等の同意が必要です。また、事業所が減ることで他の事業主の掛金が増えるときは、減る側の事業主が、増える額に相当する額を規約で定める計算方法により一括して拠出します(法第78条第1項・第3項)
・継続が難しくなったとき:共同実施で一の事業主が制度を継続することが困難な場合の特例も設けられていますが、厚生労働大臣の承認または認可と、規約に一括拠出を定めていることなどが要件です(法第78条の2)
・形態の変更:規約型から基金への移行(法第80条)、基金から規約型への移行(法第81条)の手続きが定められていますが、いずれも厚生労働大臣の承認・認可が必要です

これらは、制度に入る前の説明資料や規約で、自社が負担する掛金の決まり方、脱退するときの取扱い、財政状況の開示の方法を確認する理由になります。特定の運営団体の内容は、必ずその団体の規約と資料で確認してください。

退職給付債務の考え方や積立不足の見方は、退職給付債務とはで解説しています。掛金の税務上の扱いは、企業年金の掛金は損金になる?をご覧ください。

ネクストプレナーズの見解
実施形態は、制度の名前で選ぶのではなく、自社の加入者数と、会社が負担できる運営の手間・財政リスクから逆算して選ぶことをおすすめします。従業員300人未満の企業にとっては、基金型の人数要件がそのまま選択肢を分けるため、まず規約型か共同実施かという二択で整理するほうが実務的だと考えます。また、共同で実施する場合は、掛金の見直しや他社の脱退が自社の負担に影響し得るため、「入りやすさ」だけでなく「抜けるときと財政が悪化したときの取扱い」を先に確認することが重要だと考えています。

よくある質問
Q. 規約型と基金型の違いは何ですか?
A. 規約型は厚生労働大臣の承認を受けて事業主が外部の信託会社や生命保険会社と契約して運営し、基金型は厚生労働大臣の認可を受けて別法人の企業年金基金を設立して運営します。人数要件は、規約型にはなく、基金型は加入者300人以上です。

Q. 中小企業は総合型しか選べませんか?
A. いいえ。規約型には加入者数の要件がないため、自社だけで実施することも法律上は可能です。総合型は、複数の事業所が共同して実施する選択肢のひとつです。

Q. 従業員が100人の会社でも基金型を作れますか?
A. 単独では、設立認可の要件である300人以上を満たしません。複数の事業主が共同して設立する場合は、合算して300人以上であれば要件を満たします。

Q. 総合型は法律で決められた区分ですか?
A. いいえ。確定給付企業年金法が定める実施形態は規約型と基金型です。総合型は、複数の厚生年金適用事業所が共同して実施しているタイプの一般的な呼称です。

Q. 実施形態は、あとから変更できますか?
A. 規約型から基金へ、基金から規約型へ移行する手続きは、法第80条・第81条に定められています。ただし、どちらも厚生労働大臣の承認・認可が必要で、条件を満たす必要があります。

Q. 承認や認可の申請は、どこに出しますか?
A. 許認可の事務は厚生労働大臣が行い、権限の一部は地方厚生局長に委任されています。提出先は事業所の所在地などで異なるため、管轄の地方厚生局の企業年金課の案内で確認してください。

監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長
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本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

出典
・確定給付企業年金法(e-Gov法令検索)
・確定給付企業年金法施行令(e-Gov法令検索)
・確定給付企業年金(DB)|用語集(企業年金連合会)
・総合型企業年金|用語集(企業年金連合会)
・企業年金制度(企業年金連合会)
・確定給付企業年金の承認・認可申請(関東信越厚生局)

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